国際協力・村落開発をしたかったらどうすればいいか(Wetlands Indonesia事務局長 ニョマンさんの話)

 

 インドネシア大津波により、アチェでもたくさんのマングローブが破壊された。そのために、現地の住民は、エビ漁が出来なくなった。マングローブの再生は、防災と地域の復興にとって重要な課題である。ニョマンはマングローブと地域再生のために、ドネーション(寄付金)を携えて、現地へ向かい、人々を訪ねた。 


 村人を集め、地域再生のためのミーティングを開いたが、人々はあまり熱心ではない。ニョマンが「なぜマングローブを再び植えない?海が近いからそれが有効だよ。」と聞くと、人々は「忙しくて、子どももいるのにそんなことできないよ。時間がない」。人々は自分たちの仕事で手一杯なのだ。中には話を聞かずに寝ている人もいた。


 ニョマンは、非常に困ったが、その時あるアイデアを思いついた。「もし、私にお金があって、担保も利子も請求しないで、君たちにお金を貸してあげるとしたらどうだい?」「本当かい!?」人々は、驚いた。寝ていた人も飛び起きた。どこの銀行も彼らに生活を立て直すのに必要なお金を貸してくれないからだ。

 「君はいくら貸して欲しい?」「10万ルピー」「君は?」「20万ルピー」。ニョマンはリストを作りながら言った。「OK、貸してあげよう、ただし条件がある。マングローブの木を植えなさい。」


 人々はただちに答えた。「オーケー、やるよ!」。「さっき君たちは時間がないっていったじゃないか?」「時間ならあるよ。」「しかし、いくつ植えるかが問題だ。こうしよう、10万ルピーを貸したら50本、20万ルピーなら100本、つまり2000ルピーにつき一本だ。」「しかし、もしもっと植えるのなら、もっと貸してあげよう」「やるやる!」


 ニョマンのやり方はこうだ。植えた数が多ければ、たくさん貸してあげる。またA種の木を10万ルピー、ただし植えるのが難しいB種の木なら20万ルピーというように種類によって貸す額を設定する最初は50%だけ貸してあげる。そして、もし、苗が死んだらもう一度植えるという約束をする。「ちゃんと苗を管理できたら、残りの50%のうちあと25%を貸してあげよう。」「それら75%の苗がちゃんと生き残れば、残りすべての25%を貸してあげよう。無理なら返しなさい。それを他のグループに貸すから。」こうすると、彼らの中で、他の村に対する競争意識が芽生える。


 最後にこういう。「もし100%の苗が生き残れば・・お金は返さなくてもいいよ」

 村人は当然びっくりする。「それは本当かい!?」「もちろんさ。」ニョマンにしてみれば、はじめからドネーションとして持ってきたのだからオッケーだ。村の人からすれば、マングローブを植えれば、借りたお金を返さなくていいなど、前代未聞の提案である。あとは、彼らのサインと村のリーダーの同意が得られればしめたものだ。


 結果的にこの地域のマングローブの再生は成功した。しかし、はたしてはじめからドネーションを全額彼らに寄付するやりかたをとっていたらどうだっただろう?国際協力を考えるうえで、どのように村落開発をするかのいい例である。

 

ウータンでこの方法をどこかの地域でやりたければ紹介するとのことである。