Stop! 違法伐採・違法材貿易 3

インドネシア材の密輸が停止したサラワク州セマタン(2010年)
インドネシア材の密輸が停止したサラワク州セマタン(2010年)

 

違法伐採停止が

 

9割削減と変わる

 

カリマンタン!

  

                           

 

国立公園、保護区違法伐採・・

          

           ラミン材が密輸の代表例

 

カリマンタンでは大きく変わった。それは2005年頃からのことだ。

森林破壊は1980年以降も増加し、一時のモラトリアムも効果がなく、スハルト政権下では地方政府が伐採権を乱発して低地の熱帯林だけでなく、丘陵部の森林も破壊してきた。インドネシアNGOsのForest Watch IndonesiaTelapakWALHIWWFインドネシア、KAIL等のNGOsが違法伐採につき政府へ繰り返し停止を要求した。2000年以降は国立公園内や保護林でも違法な伐採がされ、違法材輸出の発覚で国際的な違法伐採停止へのキャンペーンが始まった。

 代表例は、泥炭湿地などに生えるラミンの違法取引へ停止の行動だ。

商業材としてメランティ、カポール等が合板材として使用されていたが、ラミンは1980年以前には見向きもされない樹木であった。だが、白くて加工しやすい材と判り、コタツの足材、写真フレーム、ベビーベッド、ビリヤード棒などに多様に利用され、インドネシアの泥炭湿地から、日本、EU、アメリカ、台湾、中国等に輸出された。直接インドネシアから輸出するケース、カリマンタンやスマトラ島からマレーシアのサラワク州、サバ州、半島マレーシア、シンガポールに密輸され、マレーシア産ラミン材として輸出もされて世界的な取引がされていた。2000年前後から密輸など違法な木材取引であった。

ラミンは、マレーシア・サラワク州で1980年伐採禁止され、インドネシアでは国立公園等で違法伐採された。インドネシア、マレーシアでの1990年頃のラミン生産量は100-120万㎥であったが、違法伐採・農園開発で激減し、マレーシア、インドネシアの生産量は、2000年に10万㎥もない。正にラミンは貴重樹種となった。ラミン材の利用は日本でも急激に増え、ITTO(国際熱帯木材機関)の資料では、日本の輸入が1994年に14.5万㎥、泥炭湿地等の破壊で激減したラミン材を2000年には約7.2万㎥も輸入し、ある時期には世界一であった。

 

 違法伐採材は中カリマンタンのタンジュン・プテイン国立公園やセバンガウ国立公園からジャワ島へ西カリマンタンのグヌン・パルン国立公園からサラワク州のセマタン、ルボッ・アンツー、バツ・リンタン、タビドウに運ばれ、東カリマンタンからはヌヌカン、タラカン地域からサバ州タワウ等へと運ばれていた。

トラフィック・アジアの調査等では、「カリマンタン島からサラワク州の国境越えの密輸は2003年6-7月で約1万㎥(トラック23806台分)の木材を記録」と指摘する。(インドネシア税関報告が1456㎥、マレーシア当局は112,192㎥)言う。同森林保護局は、「サラワク州ルボック・アンツー近くのべトウン・ケリフン国立公園の大きな泥炭湿地にラミンがかなり生育し、2003年マレーシア・サラワク州へは19万㎥の違法材貿易のうちラミンは約30%(57,000㎥)と推定」という。だが、サラワク木材産業開発公社(STIDC)は「17%が軽量の硬木類の混合」と申告し、ラミンの申告は皆無であった。ラミンを含む違法材の違法貿易(密輸)は、国境付近のマレーシア税関事務所が境界から20km離れたタビドウの町にあり、国境にチエック・ポイントもなく、密輸は容易く行われるからだ。

 

 

やれば出来る

      違法材ラミン材停止キャンペーン

 

当時、国際会議では「持続可能な森林経営を目指す」論議や決議がされても違法材停止がされず、違法材の輸入は推計が約2割強というが、一向に停止できない点に悩んでいた。

 

2003年11月、インドネシアスマトラ島で違法伐採による大惨事が起き、招聘していたTelapakからのラミン材停止キャンペーンを受け、ウータンも調査に合流することを決め、キャンペーンをも実施することを両団体で決めた。

2004年1月にウータンがキャンペーンを中心に担い、ラミン調査会は調査中心と決める。2月に取り扱い企業が約200社近くと判明し、3月には百貨店、ホームセンターを全国全てヒアリング。インターネットの活用や現場調査で判明し、4月からの本格的な違法材・違法貿易停止の『やれば出来る!違法材ラミン停止キャンペーン』を実施。

4月末、取引・製造・販売の企業へ停止依頼を開始。5月、ラミンの使用企業は約300社以上使用と判明した。「年末までに220社停止」と目標を掲げた。その後も回答がさみだれ的に寄せられた。2004年10月にワシントン条約でラミンは保護種Ⅱに格上げされ、インドネシア産は1社を除き輸出禁止、またマレーシアでも原産地証明がないと輸出入できないことになった。

日本では2004年末に250社が停止。しかしTelapakや国際NGOのEIAは、「違法材調査でまだインドネシア産ラミンをマレーシア産として輸出」と告発。私たちは継続して『やれば出来る!違法材ラミン停止キャンペーン』を続け、2007年4月には日本企業が550社を越す未曾有の停止となった。

ウータンでは2004年末からTelapak等と情報共有や交換を行い、西カリマンタン、東カリマンタンの密輸、違法伐採の共同調査を続け、シンガポールの企業等へラミン材停止を依頼し続けた。 

国際キャンペーンの成果で、2007年にシンガポールのラミン材使用・輸出企業の80社のうち9割が停止を表明してきた。またウータンとTelapakは、ITTO(国際熱帯木材機関)理事会で違法材取引や違法伐採の事実を示し、希少種のラミン、メルバウをITTOがワシントン条約で保護種にするように働きかけた。当然、両国政府に違法材取引の情報や取扱い企業を知らせていたが、、、。

 

 

 

ラミン材使用停止宣言

        NGOで国際的違法伐採停止の潮流

 

ウータンなどは【やれば出来る!違法材停止ラミンキャンペーン】として、ラミンの輸入・使用の日本企業などに働きかけた。その結果2007年4月、日本で使用量の約95%に相当する企業がラミンの輸入・取扱いを停止した。2006年にシンガポールのラミンの輸入企業の8割も停止。TelapakとEIAの活躍で、半島マレーシアのジョホール・バルのかなりの輸入企業がラミン停止した。

2007年、インドネシア政府の取組みで、同国の主要な木材市場ではラミンの販売が困難になってきた。加えて2007年4月、EUのラミン輸入の一時停止により、密輸されるラミンの販売は世界的に一層困難になってきた。

近年の日本、EU、インドネシアをはじめとする国際的な違法伐採・違法貿易対策で、今後ラミンは2年強でほぼ販売が不可能になるだろう。

2007年4月末、インドネシア・カリマンタンとマレーシア・サラワク州の国境ではラミンの取引がほぼなくなった。1箇所を除きこの国境で違法材の取引が激減したが、スマトラ島と半島マレーシアのルートで密輸が継続されている。私たちや多くのNGOが今後も連携・協力して、インドネシア、マレーシア政府に停止を再度依頼したり、輸入企業にラミン使用停止を働きかけていけば、全世界的な取引が完全に停止されるだろう。ITTO(国際熱帯木材機関)でも第39回理事会で保護の決議がされている。

 ここに私たちは、【違法材ラミン密輸停止宣言】を発する                  

希少種ラミンの世界的な取引停止に近づき、絶滅危惧種のオランウータン、テングザル、ギボンなど多くの動物たちも徐々に生息域を回復することができるようになるだろう。

熱帯林保全にとって大きな勝利であり、成果でもある。みんなが努力すれば必ず停止できる。

 

2007年6月29日

Telapak (Indonesian Environmental NGO)

EIA(Environmental Investigation Agency) –nited Kingdom & USA, Singapore    HUTAN Group(ウータン・森と生活を考える会)-Japan & Malaysia

Ramin Research Committee(ラミン調査会)

FoE Japan(国際環境NGO FoE Japan)        

 (『ラミン材停止宣言』は部分省略)

 

  中カリマンタンのタンジュン・プテイン国立公園では違法伐採が停止し、木材企業6社が操業停止後、廃業となった。同公園内で見ることが困難の野生のオランウータンは、伐採停止して人がいないラミンが残る森へ戻りだした。

地元NGOのFreinds of National Parks Foundation(以降FNPFと記載)のメンバーは野生の保全や公園の保全に向けて原生種の植林を拡げ始めた。以前、タンジュン・プテイン国立公園内で違法伐採に従事していた人々にも説明して、彼らを引っ張って植林を今、実施している。

 

モラトリアム宣言・ユドヨノ大統領(2010年)
モラトリアム宣言・ユドヨノ大統領(2010年)

 

西、東カリマンタンで大規模な密輸材摘発

                  違法伐採停止へ】

 「どないしているんや、トグ?いつからインドネシア政府に

寝返ったのや」と、私。

 フォレスト・ウオッチのTogu(現在ボルネオ・オランウータン・サバイバルのCEO兼議長)氏は「迷ったが、林業大臣が相談役になってほしいとの連絡があり、今は林業大臣相談役をすることになった。インドネシア政府は変わってきた。違法伐採が続いているが、インドネシア政府としても気急な課題なので」と。

 「林業省は違法伐採について取り組んできて、大きな成果を上げた。しかし現場では違法伐採が続いている。この問題を撲滅させるために取り組んでいきたい。今後の活動としては違法伐採者を逮捕するだけでなく、裁判を通してこの犯罪性を明らかにしていかねばならないだろう。この闘いは長いものになると思うが、我々は必ず実行していかねばならない」と、2007年にトグ氏と再度会った際に言う。

2007年秋、西カリマンタンでは大手企業Aクスマグループの責任者が違法伐採容疑で逮捕された。そして2008年3月、初めての海上での大掛かりな密輸材摘発がされてから、西カリマンタン一帯が静まりかえった。陸路は違法伐採の運搬についてインドネシア側で摘発が2007年から続けられ、マレーシア・サラワク州へほとんど運べなくなった。

東カリマンタンの最もサバ州に近いヌヌカンでは、対岸の森林から違法伐採していた木材を製材所に運べず、2007年に工場が閉鎖。サバ州タワウ市の多くの企業が2008年12月に工場操業の停止や一時閉鎖となっていた。密輸をインドネシア海上警察や同国の軍が摘発してきたのだ。

マレーシア政府は依然として動き出さないが、インドネシアの行動で違法材取引が激減してきて、この2009年にはボルネオ島の違法材取引の9割がなくなった。

以前違法貿易に携わったと思われる人が言う。

「木材の違法貿易や密輸が見つかり逮捕されたら1人100USドル取られる。中型船なら1500ドル以上の罰金となり、こんな大金は払えない。危険な状況にある密輸より、陸路でサマリンダの多くの工場に運ぶほうが得策だよ。」

 

2009年、Yayasan Titianのユユン氏との東カリマンタン共同調査以降次々と判明してきた。今年の末にはサマリンダにある大手企業木材企業も倒産か、廃業となるだろうということなどを。

東カリマンタンのサマリンダ北部一角は違法伐採が停止した。クタイ国立公園やその北側の地域ではまだ違法伐採が続く。中カリマンタンのマワス、セバンガウ国立公園でも違法伐採は停止して、「Victory」との報告。サンピット地域でまだあちこちで違法伐採が続いている。癒着は絶滅していないが、地方でも違法な伐採や密輸が激減してきた。

木材マフィアの一部はアブラヤシ開発企業へと変身しだしたのだ。木材では儲けにならず、このままでは仕事ができない。インターネットを見比べると2-3年前から違法伐採情報が激減した。違法伐採する情報は人々がYouTubeで流し始めだした。違法伐採したら、えらい目に会うのが現在だ。大変な変化である。

 2010年5月27日、ユドヨノ大統領は2年間の森林伐採のモラトリアム(一時停止)の声明を発表した。しかし2010年7月、インドネシア国内の違法伐採はまだ続いている。